胸を張っても、姿勢が戻るのはなぜ?足元から考える姿勢の話
鏡に映った自分を見て、背中が丸くなっていることに気づく。
胸を張って、背筋を伸ばす。
でも、しばらくすると、また元の姿勢に戻っている。
「もっと意識しないとダメなのかな」と思っていませんか?
姿勢を意識することも大切ですが、胸や背中の形を変えるだけでは十分ではありません。
一緒に考えたいのが、上半身を下から支えている、体幹・下半身・足の働きです。
胸を張るだけでは、続かない
姿勢をよくしようとして、肩を後ろに引き、腰まで反らしてしまう。
その状態を保とうとして、背中や腰が疲れてくる。
これでは、ずっと続けるのは大変ですよね。
そもそも姿勢には、身体を支える筋肉や関節の動き、普段の過ごし方も関わっています。
例えば、パソコンの画面が低ければ、胸を張り直しても、作業に戻るとまた下を向くことになります。
米国国立医学図書館の姿勢に関する案内でも、姿勢への意識と併せて、体幹を鍛える運動や、作業台の高さ、履き物を見直すことが勧められています。[1]
見た目をその場で直すことに加えて、その姿勢になる理由も考える。
立ち姿勢なら、その一つが身体の土台となる足元です。
足元が変わると、その上の身体も動く
例えば、立ったまま右足へ体重を移すと、骨盤も右へ移動します。
そのとき、上半身も倒れないようにバランスを取っています。
足、膝、股関節、骨盤、体幹は、それぞれ独立して身体を支えているわけではありません。
一か所の動きに合わせて、ほかの場所も動いたり、力の入れ方を変えたりしています。
こうした身体のつながりを「運動連鎖(キネマティックチェーン)」と呼びます。
このつながりは、足の親指のような小さな部分にもあります。
健康な成人8人を対象に、親指のつけ根を装具で動きにくくして歩いてもらった研究では、足首だけでなく、膝や股関節の曲がる角度や、関節にかかる力も変化しました。[2]
変えたのは足の一部分なのに、その影響は脚のほかの関節にも現れたのです。
歩行中の実験ですが、足元と膝・股関節を、一緒に考える理由が分かります。
もちろん、姿勢が気になる原因がすべて足にあるわけではありません。
ただ、胸や背中だけを見ていると、下から支えている身体の働きを見落としてしまいます。
足裏は、身体を支えるだけではない
足裏には、もう一つ知っておきたい働きがあります。
それは、どこに体重がかかっているか、地面がどんな状態かを感じ取ることです。
裸足で硬い床に立ったときと、柔らかいじゅうたんに立ったときでは、足裏の感触が違いますよね。
身体は、足裏から伝わる情報も使いながら、立つときのバランスを調整しています。
実際に、立っている人の足裏に小さな振動を与えた実験では、刺激する場所によって身体が傾く方向が変わりました。[3]
足裏で受け取った情報が、身体全体の反応につながっているのです。
足で体重を受け、その感覚をもとに、足首や膝、股関節などで支え方を調整する。
私たちが何気なく立っている間にも、こうしたやり取りが行われています。
だからこそ、姿勢を考えるときには、足裏も含めた身体のつながりに目を向けたいのです。
姿勢が気になったら、身体を支える下半身から
足元から身体がつながっているなら、姿勢のために取り組むことも、胸や背中だけに限りません。
身体を支える脚の筋肉を使うこと。
そして、足の動きを妨げないように、普段の靴の履き方を見直すこと。
まずは、この2つから始めてみましょう。
椅子から立つ・座る運動を5回
椅子から立ち上がるときは、足で床を押し、膝や股関節を伸ばして身体を持ち上げます。
普段は何気なく行っている動作ですが、ゆっくり繰り返すことで、身体を支える脚の筋肉を使う運動になります。
英国NHSも、自宅でできる筋力トレーニングとして紹介しています。[4]

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- キャスターのない、滑らず安定した椅子を用意する。
- 椅子に浅く座り、両足を腰幅くらいに開いて、足裏を床につける。
- 身体を少し前に傾け、前を見ながらゆっくり立ち上がる。
- 立ち上がったら、ゆっくり腰を下ろして座る。
- まずは5回を目安に繰り返す。
立ち上がるのが難しい場合は、肘掛けなどに手を添えて補助してください。
痛みのない範囲で、できる回数から始めましょう。
姿勢の形を意識することに加えて、その姿勢を支える筋肉を使う機会をつくる。
これも、姿勢のために日常でできる取り組みの一つです。
いつものスニーカーを、履き直してみる
もう一つ見直したいのが、毎日履く靴です。
足指が押し込められていたり、脱げないように指を曲げて靴を引っかけていたりすると、足を動かしにくくなります。[5]
まずは普段のスニーカーで、次の3つを試してみてください。
1.かかとを合わせる
ひもを緩めて足を入れ、つま先を少し上げて、かかとで床を軽くトントン。
かかとが靴の後ろに収まった状態で、ひもを調整します。
2.つま先に約1cmの余裕を残す
かかとを合わせて立ち、一番長い足指の先に、約1cmの余裕があるか確かめます。
足の横がきつい場合は、長さだけでなく、靴の幅やつま先の形も見直しましょう。
3.ひもは、つま先側から順に整える
足首に近いところだけを強く引っ張らず、つま先側から順に緩みを整えます。
足指にはゆとりを残し、甲は足に沿わせるのがポイントです。[5][6]
サイズが合っていても、かかとが前へずれたままでは、指先が窮屈になることがあります。
新しい靴を探す前に、まずはいつもの一足を履き直してみましょう。
足に負担がかかる理由や、それぞれの確認方法は、「歩くと足裏が疲れやすい。その時足で起きていることと解決ポイント3つ」で詳しく紹介しています。
姿勢を考える入口は、足元にもある
胸を張る、背筋を伸ばす。
そこに、身体を支える脚を使う運動と、足の動きを妨げない靴の履き方も加えてみる。
まずは椅子から立つ・座る運動を5回、そして、いつものスニーカーをかかとに合わせて履き直すところから始めてみてください。
足裏の動きに目を向けることは、立ち姿勢や歩くときの体の使い方を考えるきっかけにもなるのです。
参考文献・資料
[1]米国国立医学図書館・MedlinePlus.
Guide to Good Posture
姿勢に関わる運動、作業環境、履き物、同じ姿勢を続けない工夫について参照。
[2]Xu R, et al.(2021).
Effects of Short-Term Limitation of Movement of the First Metatarsophalangeal Joint on the Biomechanics of the Ipsilateral Hip, Knee, and Ankle Joints During Walking. Medical Science Monitor, 27:e930081.
健康な成人8人を対象に、足の親指のつけ根を一時的に制限した際の、歩行中の足首・膝・股関節の変化を調べた研究。
[3]Kavounoudias A, Roll R, Roll JP.(1998).
The plantar sole is a ‘dynamometric map’ for human balance control. NeuroReport, 9(14):3247–3252.
立位の成人10人を対象に、足裏への振動刺激と身体の傾きとの関係を調べた研究。
[4]NHS.
Strength exercises
椅子から立つ・座る運動の手順と回数の目安について参照。
[5]Guy’s and St Thomas’ NHS Foundation Trust.
Choosing shoes to reduce foot pain
足指の空間、靴の幅、ひもやストラップによる足の保持について参照。
[6]ミズノ公式ユーザーサポート.
ウォーキングシューズの選び方・履き方
かかとを合わせる履き方と、靴ひもの調整について参照。